比較文明学について
比較文明学は、現代人の文明生活特有な空間的境界を超え合うグローバリゼーション、精神的境界を超え合う異文化間接触、方法論を異にする知識間の融合などを前提として、現代の文明に特有の問題を従来の学問方法論にこだわらない仕方で扱う「新しい総合人間学」ともいうべき学問です。私たちが目指す比較文明学の基本的考え方とこの専攻の研究教育の方針を提示します。
比較文明学とは
比較文明学は、文化現象を個別に論じるのではなく、人文知の可能性を最大限に探求する場です。従来の学問領域に限定されない人文学の総合的な知を養っていきます。
人文知の総合力
文学、哲学、表象文化論、文化批評など、人文学の基礎を踏まえつつ、多様な視野と知識の習得を可能にします。
時空を横断する文化研究
現代思想や文芸の動向に触れながら、世界的な座標軸のなかに、みずからの研究を位置付けることを推奨します。
創造的学習・研究を実施
複合領域を学位論文テーマとする創造的学習・研究が可能です。
カリキュラム
立教大学文学研究科比較文明学専攻は、自らが規定する比較文明学を具体化するに当たって、以下の方針でカリキュラムを構成します。
人文科学系の学問の目的は、そもそも社会的な存在としての人間と、その文化的な営みについて研究することにあります。ところが、従来の人文科学の学問的な枠組みを維持したままでは、現在、大きくまた深く変貌を遂げつつある現代社会が抱えている文明学上のさまざまの問題に対して十分に対処できなくなっているように思えます。立教大学では、そうした文明学上の諸問題の中でも、とりわけ次の5つの課題、すなわち、
1.境界の消滅に関わる問題
2.人間の欲望に関わる問題
3.多様な言語と文化の共存に関わる問題
4.多様な言語表現の形式同士が交わることで生じる問題
5.文字音声の言語によらない表現形式が現代文明に及ぼす力の問題
これらを人文科学研究において率先して扱うべき重要課題であると位置づけ、そうした重要課題に答えるために、これまでにない新しいコンセプトに基づく4つの研究領域(科目群)を設置しています。
1.現代文明学領域
2.文明工学領域
3.言語多文化学領域
4.文明表象学領域
学位について
修士の学位は、博士前期課程に2年以上在学して授業を受け、所定の単位を修得し、かつ修士論文を提出し、その審査及び最終試験に合格した者に対して授与されます。
比較文明学専攻博士課程前期課程が授与する学位は「修士(比較文明学)」とし、英文の表記は、Master of Arts in Comparative Civilizations となります。
なお、比較文明学専攻博士課程後期課程が授与する学位は「博士(比較文明学)」とし、英文の表記は、Doctor of Philosophy in Comparative Civilizations となります。
学位取得まで
正副2名の指導教員体制
比較文明学専攻では、研究対象分野の比較および複合を目指します。場合によっては方法論についても比較と複合が必要です。それゆえに、特に前期課程では、入学直後から複数教員による研究指導が必要と考えています。
前期課程では、入学直後から院生ごとに正副2名の指導教員が決められます。前期課程では30単位の授業履修が修了要件に入りますが、指導教員が当初の科目履修選択の仕方から相談に応じる体制になっています。複合型の学習と研究をしっかり支えます。
後期課程では、正副2名の指導教員による個別の研究指導を受けることが大学院での研究生活の中心になります。
前期課程の流れ
1年次前期:全員参加授業で研究テーマ発表。先輩の修士論文中間報告会に参加。
1年次後期:全員参加授業で研究進捗状況報告。
2年次前期:指導教員の指導の下に修士論文中間報告会資料作成。目次、内容概要、参考文献表などができている必要があります。
2年次夏期休暇:文献読み込み、原稿執筆。
2年次後期:10月中に指導教員に中間的原稿を提出。その後、頻繁に内容および文章指導も受けます。
2年次後期1月中旬:修士論文提出。
2年次後期3月:学位授与式。
後期課程の流れ
正副2名の指導教員の指導を受けます。授業出席と単位履修は義務づけられていませんが、毎学期、その学期内に行った研究の進捗状況報告と研究成果報告を、研究報告書として大学に提出することが義務づけられています。2名の指導教員による普段の研究指導とそれに相応しい研究成果でもって、学期ごとに後期課程院生としての研究活動内容の認定が行われます。6学期分の認定が修了要件に入ります。
2年次後期の1月中旬に、既に3学期分の研究報告が認定されている院生は、博士論文中間報告書を提出することができます。これは博士学位申請論文を提出するための必須要件として、義務づけられています。この博士論文中間報告書は面接試験を経て受理されます。受理されますと、正式に博士学位申請論文を執筆し、提出することができます。博士学位審査は年に2回行われ、授与式は3月と9月に行われます。
立教比較文明学会について
比較文明学専攻には、在学者の研究支援、修了者のその後の研究支援、情報提供、研究交流、同窓会としての親睦、などを目的とした立教比較文明学会が2000年に設立され、現在に至っています。
立教比較文明学会の会員は、比較文明学専攻前期課程・後期課程の在学者および修了者、比較文明学専攻の科目担当者および担当経験者、そして、比較文明学専攻と本会の趣旨に賛同し本会の活動に参加する意思のある研究者および団体です。
立教比較文明学会の活動は、専攻の機関誌であり学会紀要でもある『境界を越えて―比較文明学の現在―』を年1回発行することと、立教比較文明学会総会を開催すること、以上の2点を中心に行われています。
『境界を越えて―比較文明学の現在―』は立教比較文明学会総会関連論文、投稿論文、教員論文、優秀修士論文、研究ノート、前年度修士論文題目リストなどで構成されています。立教比較文明学会会員は論文および研究ノートを投稿することができます。掲載には学会内での査読審査があります。詳しい投稿規定は毎年発行される本誌に最新のものが掲載されています。
なお、『境界を越えて―比較文明学の現在―』に掲載された論文のほとんどは、立教大学のリポジトリ「立教Roots」に掲載されていて、PDFファイルで読むことができます。ダウンロードも可能です。以下のリンクから読みたい号をクリックしてください。
立教大学学術リポジトリ 立教Roots|境界を越えて:比較文明学の現在
また、立教比較文明学会総会は、学会員の研究発表の場であるとともに、学会員相互が研究に関して情報交換を行う場として毎年開催されています。近年は特に、在学者の学位論文作成をも考慮し、在学者の研究発表およびそれに対する指定討論、自由討議などを重視し、学会員相互の研究交流を中心とした会を催しています。
この他、外部から講師を招いて公開講演会なども開催しています。これらの情報については、学会員には専用メーリングリストで周知されるとともに、必要に応じて大学ホームページなどでも一般にも広報されています。