講演会記録 2014 年度




2014年度立教比較文明学会研究交流会

[日時]2014年10月20日(月)17:00~18:45(終了後、懇親会あり)

[会場]立教大学池袋キャンパス11号館A203教室

[時程]
17:00~17:10 開会の辞(主任・林文孝教授)

17:10~17:55
「ライプニッツにおける人間の有限性――スピノザの影響から考える」
報告者:丸山諒士(比較文明学専攻前期課程1年)
コメンテータ:片上平二郎助教
司会:佐々木一也教授

17:55~18:40
「永遠の炎(かげろい)を見すえて ―短詩における〈レアリスム〉と〈私〉―」
報告者:井上法子(比較文明学専攻前期課程2年)
コメンテータ:東直子氏(歌人)
司会:小野正嗣准教授

18:40~18:45 閉会の辞(主任・林文孝教授)

19:00~
懇親会(池袋キャンパス内ウイリアムズホール・カフェテリア山小屋)
会費無料

[お問い合わせ]立教比較文明学会 email : gakkai-h@rikkyo.ac.jp


オイコノミア研究会公開セミナー

経済的思考を問い直す:桑田学『経済的思考の転回 世紀転換期の科学と統治をめぐる知の系譜』(以文社)を読む

[日時]2014年8月4日(月)14時~17時30分

[会場]立教大学池袋キャンパス16号館第1会議室 (池袋キャンパスマップ)

[講師]桑田学(東京大学特任研究員)

[討論者]
板井広明(東京交通短期大准教授、功利主義研究)
真島一郎(東京外大AA研、人類学・モース研究)
中山智香子(東京外大、社会思想)

[司会]:西谷修(立教大学、思想史)

[概要]
現代の経済理論の中心は、新自由主義をはじめ、、すべてを商品化して計量する、いわゆる市場理論と言われ、その創始者はF.A.ハイエクで、理論が形成さ れたのは第一次と第二次の世界戦争の間だった。だが、その時期はまた、19世紀後半以降の熱学思想の進展が、ニュートン力学を基礎とする自然認識の根本的 な変革を迫った世界認識の大転換の時期でもあった。
桑田学氏は、最新著書『経済的思考の転回 世紀転換期の科学と統治をめぐる知の系譜』(以文社)のなかで、オットー・ノイラートの資源・エネルギーを含めた人間の生存条件を踏まえた統治の経済思想を、ハイエクの市場理論との比較を通じて明らかにしている。
本セミナーでは、桑田氏本人に著書の主旨を解説していただき、それを受けて経済原理主義と別の経済的思考の分岐について、多面的に議論を重ねていく予定。

[主催]立教大学文学研究科比較文明学専攻

*入場無料、予約不要

国際シンポジウム《 Images of East European Literature: The Variable and Invariable in the Past and Present》

[日時]2014年9月28日(日)9:45~18:15

[会場]立教大学池袋キャンパス 12号館地下1階 第1、第2会議室

[時程]
09:45~10:00 Opening Remarks: Kenichi Abe (Rikkyo University)

10:00~12:00
Session 1: Journey, Migrations and Literature

  • Natasza Goerke (Writer): “Ten Months and two Days. Fragments.”
  • Satoko Inoue (Kumamoto University): “Imagination of Spaces and Places in Polish Travel Writing after 1989”
  • Hikaru Ogura (University of Tokyo): “Migration in the Polish Documentary Film”
  • Chair: Kenichi ABE (Rikkyo University)
  • Discussant: Tokimasa Sekiguchi (Tokyo University of Foreign Studies)

12:00~13:15 Lunch

13:15~15:15
Session 2: Rewriting Literary History

  • Ariko Kato (Nagoya University of Foreign Studies): “Rewriting Europe: The Central Europe of Yuri Andrukhovych and Andrzej Stasiuk”
  • Elena Gapova (Western Michigan University): “Things Fall Apart: The “Moral Revolution” of Svetlana Alexievich”
  • Go Koshino (Hokkaido University): “Belarusian Literature Written in Russian”
  • Chair: Hikaru Ogura(University of Tokyo)
  • Discussant: Kazuhisa Iwamoto (Wakkanai Hokusei Gakuen University)

15:15~15:30 Coffee Break

15:30~17:00
Session 3: Literature of Micro-nations

  • Grzegorz Schramke (University of Gdańsk): “The Most Recent Kashubian Literature – the Situation Today, Achievements and Tasks for Immediate Future”
  • Delia Grigore (University of Bucharest): “A Pattern of Thinking in the Rromani Poetry”
  • Chair: Motoki Nomachi (Hokkaido University)
  • Discussant: Kenichi Abe (Rikkyo University)

17:00~17:30 General Discussion

17:30~18:15
Poetry Reading
Natasza Goerke, Delia Grigore, Grzegorz Schramke

[Organizer]
JSPS Grant-in-Aid for Scientific Research B, “Images of East in Eastern European Literature”

[Co-Organizers]
Graduate School of Arts, Rikkyo University
Slavic-Eurasian Research Center, Hokkaido University
The Japan Society for the Study of Slavic Languages and Literatures
JSPS Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research “Comparative Study on War Narratives in Belarus, Ukraine, and Sakhalin”

※ 入場無料、予約不要
※ 使用言語:英語

公開シンポジウム「〈異他なる空間(ヘテロトピア)〉へ ─映像・景観・詩─」

立教大学大学文学研究科 比較文明学専攻の主催による公開シンポジウム「〈異他なる空間(ヘテロトピア)〉へ ─映像・景観・詩─」のお知らせです。入場無料、予約不要です。どうぞご来場ください。

[日時]2014年11月22日14:00~18:00

[会場]立教大学 池袋キャンパス 7号館2階7205教室

[報告・討論者]
石田尚志(いしだ・たかし、画家・映像作家、多摩美術大学准教授)
石山徳子(いしやま・のりこ、北米地理学研究、明治大学教授)
倉石信乃(くらいし・しの、美学・美術史、明治大学教授)
虎岩直子(とらいわ・なおこ、アイルランド文学・文化論、明治大学教授)
林みどり(はやし・みどり、ラテンアメリカ思想文化論、立教大学教授)

[シンポジウムの趣旨] 林みどり
「ヘテロトピア」という言葉を空間spaceに関して最初に用いたのは、フランスの哲学者ミシェル・フーコーである。最初にこの言葉が用いられた『言葉と物』(1966年)では、もっぱら言語空間において生成する抽象的な空間を意味する概念だったが、翌年におこなわれた講演(「異他なる空間」”Des espaces autres”)では、より具体的な空間と位置づけなおしている。「異他なる空間」では、ヘテロトピアは、歴史性をともなった具体的な空間(物質的な空間を含む)として定義し直されている。
このように初発の段階から、ヘテロトピアは両義的で曖昧さをともなう概念として構想されたことは確認しておく必要はある。だが、『言葉と物』と「異他なる空間」の両テクストを貫く共通性がないわけではない。言語空間であれ現実の空間であれ、広く自明のものとされている共通の修辞的基盤や統語的基盤、あるいは空間を成立させる整序性に、ヘテロトピアは亀裂を入れ、その範列的な序列を突き崩し、統辞法を縺れさせ、混乱させる機能をもっている点だ。
その意味でヘテロトピアとは、「社会の制度そのものの中で構成された反=場所」ということができる。みずからが属する文化の内側に見いだしうる現実の場所を、同時に表象し=異議を申し立て=反転する、そのような空間である。それは社会制度や文化の内部にありながら外部性を包含し、他のあらゆる場所から絶対的に異他なる空間として生成されるのだ。
さしあたりヘテロトピアを以上のように定義するとき、「異他なる空間」(ヘテロトピア)に向かおうとする力学は、テクノクラシーによって構成された言語・社会・空間システムに不安を与えるものにならざるをえない。本シンポジウムでは、具体的な事例や作品をとりあげながら、芸術や社会運動において「異他なる空間」(ヘテロトピア)がどのような文化的・政治的実践として展開されているかを明らかにする。

【個別報告─1】「北アイルランドの現代詩人が送る〈ヘテロトピア〉への招待状」虎岩直子
フーコーは「鏡」と「船」を「ヘテロトピア」の例として挙げている。どうやらフーコーにとって「鏡」「船」は「ヘテロトピア」そのものであるようだが、このふたつはしばしば芸術作品や作品を産み出すイマジネーションの比喩として使われてきた。たとえばアイルランド出身のシェーマス・ヒーニーはノーベル賞受賞講演で「詩というかたちは船であり錨である」と言って、日常生活世界から離れて異他世界を想像する力とその想像力の形象化である詩(読者をまた異他世界へ誘う力を持つ)を「船」に喩えている。
本発表は、それ自体ある意味で「ヘテロトピア」である芸術作品が、「鏡」「船」となって、日常生活世界のあちこちにある「ヘテロトピア」に「招待する」、という可能性に極めて意識的な現代アイルランド詩人シネード・モリッシーの作品を読解し、さらに、互いに表層的異他であるものが葛藤を繰り広げてきた土地のひとつの典型としての北アイルランドの都市空間を紹介して、「ヘテロトピア」を見る力の倫理的意義について考察する。

【個別報告─2】「入植の記憶と写真」倉石信乃
開拓・入植という営みは、当該の土地に文化的な混淆をもたらすけれど、先住者の権利を根こぎにする暴力の行使から逃れがたい。歴史が教えるこの前提に立ちながらもなお、われわれは「他所」を単に旅行者としてではなく、その場に住まいうる者として思考しなければならない。ここでは、日本の近代化に併行して残された『入植」をめぐるいくつかの写真的実践を手かがりに、そのことを考えてみたい。

【個別報告─3】「アメリカ原子力開発とヘテロトピアの地理空間 ハンフォード・サイトを事例に」石山徳子
アメリカ合衆国ワシントン州の南東部に位置するハンフォード・サイトは、プルトニウムの生産を目的としたマンハッタン計画の一拠点として1943年に設置されて以降、第二次世界大戦から冷戦期にかけて同国の原子力開発を支えてきた。そのいっぽうで、ハンフォード・サイトは世界有数の放射能汚染の現場でもある。2015年には除染作業が一段落するのに伴い、一部を除いたハンフォード・サイトの敷地の土地使用方法について連邦諸機関、隣接する町、そしてこの土地との歴史的な接点を主張してきた先住民族のあいだで議論が行われている。マンハッタン計画国立歴史国立公園を新設する議案が注目されるなか、先住民族は土地使用権を自らの手に取り戻すことにより、現場の地理空間とのあいだに構築されてきた文化的、精神的な接点を回復する方向性を模索している。本報告では、先住民族による植民地主義の歴史への抵抗の営みとも解釈できる動きについて、フーコーのヘテロトピアの概念に照らしながら読み直してみたい。国家安全保障政策のもとに構築されたハンフォード・サイトの空間に内在する権力構造と混乱の諸相、さらにこれに異議申し立てを行いつつ、自らの生活文化圏の再構築を目指す先住民の抵抗について、ヘテロトピアの実践の現場として考察する。

【個別報告─4】「鏡のヘテロトピア」林みどり
20世紀後半、南米の軍事政権下では、数万のひとびとが強制的に失踪させられ、いっさいの痕跡をとどめず「消滅」(強制失踪)させられたり、幼くして出自を奪われ、記憶をすげ替えられたりしてきた。こうした制度的暴力の傷跡をまえに、視覚芸術や文学は、なにをどのように表現してきたか。
非在のひとびとに表象可能性を奪還しようとするさまざまな試みを、鏡をもちいた「作品」を手がかりにさぐっていく。現実の社会空間に可視化しえないひとびとの「場所なき場所」を可視化する無謀な企て。その試みのなかで、ヘテロトピアはいかなる可能性の空間を拓いてきたのだろうか。

【個別報告─5】「アトリエはどこにあるかー作品が作られる場ついての具体的な報告」石田尚志
ここでいうアトリエは、いわゆる画家や彫刻家における安定した制作環境ではなく、自分の制作を振り返った時に見えてきたいくつかの不安定な場所のことです。
たとえば、「部屋/形態」(1999)の撮影をした東京大学駒場寮や、「海の映画」(2007)を公開制作した横浜美術館。また、作家活動の出発の地である沖縄や、90年代前半にライブ・ドローイングをしていた東京夢の島公園など。それらは異他の空間として立ちあらわれ、自分に大きな作用を及ぼし、その場との出会いそのものが作品として結実していきました。全てに言及するのは難しいかもしれませんが、いくつかの場所と作品についてお話したいと思います。

※ 入場無料、予約不要